デザインの次に来るもの 2483

デザインドリブンイノベーションという考え方がイタリアで起こっている。意味のイノベーション、新しく意味を見出すということ。電気が発明されてロウソクは駆逐されたが、逆に自然の火がムーディーな雰囲気をもたらすとして最注目される。つまり、新しい意味を見出すということ。

 

仕事についても同じことが言える。一昔前はより豊かな生活をするために仕事をしていたが、豊かな生活がデフォルトとなった世代では、仕事に新しい意味を求めるようになった。

 

デザインには小さなデザインと大きなデザインがある。前者は色や形といった目に見えるもの、後者は問題解決や組織づくりなど目に見えないもの。

 

ワインのコルク抜きを開発するときに、家庭に入ってコルクの抜き方を細かく観察する手法では、効率的にコルクを抜く器具しか開発することができない。しかし、家庭における夕食の意味という観点から考えると、夕食とは家庭において安らぎを与えるものであり、その観点からコルク抜きを考えると全く新しいものに変わる。デザインとは、一つ上の抽象度から物事を見て、新しい意味を見つけることである。

 

デザイン思考では、問いの方向性を変えることが大切。キッチン用品メーカーでは、「あなたの家族は夕食にどんな意味を求めていますか」という問いから製品開発を始める。照明器具メーカーでは、「午後7時に帰ってきた30代女性をどうやって癒しますか」という問いから開発を進める。

 

断捨離もただ単純にモノを捨てれば良いという訳ではなく、新しい問いが必要。例えば、1年間旅行に行くとすれば持っていきたいものは何ですか。つまり、この問いの答えになるものが本当に必要なもの。

 

意味を再発見するという手法を用いることにより、今まではプロダクトデザイナーだけがデザインに関わっていたが、心理学者や社会学者など従来はデザイン領域に関係のなかった人たちまでプロジェクトに巻き込むことになる。人は夕食に何を求めているか、人は仕事帰りの家での空間に何を求めているか。製品だけを見るのではなく、もう一つ上の次元でものを見ることにより、その製品に新しい意味を見つけることができる。

 

テレビ局もどうしたら面白い番組をつくることができるか、という問いではなく、スマホの画面からテレビの画面に目を向けてもらうにはどうすればいいのか、という問いもありうる。友達とファミレスにいる高校生をどうやって家に帰すかなど。問いの設定の仕方によって答えは丸っきり変わってくる。

 

どうすれば売上を拡大することができるか、利益を拡大することができるかという問いでは、コストカットや選択と集中などの解決策しか出てこないが、お金の無駄遣いをするにはどうすればいいか、10億円もらっったら何をしたいか、など、問いの仕方を変えれば、新しいアイデアが生まれる。テレビ局が10億円を使って世の中を楽しませるために使うならば何をするのが一番良いか(売上や利益などの見返りは一切不要)。

 

イタリアはデザインに強みを持つ。この文脈で語られるときのデザインとは色や形などの小さなデザインだ。最近は企業の課題解決などの文脈でデザインが語られることがあり、アメリカのコンサルティング会社やスタンフォード大学のデザインコースが話題となっている。後者のデザインは、新しい意味を見つける、と解釈することができる。

 

小さなデザインでは、マグカップの形状、色、素材をどうすればいいかということに重きが置かれ、大きなデザインでは、飲み物を飲むという意味ではない、新しい意味をマグカップに与えることからスタートする。

 

ほぼ日は意味のイノベーションが得意な会社。予定を書き留める手帳を新しく解釈したほぼ日手帳は大ヒットしている。ほぼ日のWebサイトには様々なコンテンツがあり、社員はユーザーがどんな情報に興味を持っているかがわかるため市場調査をする必要がない。ユーザーの興味から、今世の中がどの様な方向に向かっているかを把握することができる。

 

今世の中がどの方向に向かっているかを把握することは新しい意味を見つける上でも大切。時代によってモノに与えられる意味は変わってくる。美術館のオープニングセレモニーでは、アート界で活躍している人たちから会のコンセプトが語られるが、それは世の中の流れを理解する上で役に立つ。

 

ファイナンスの現場にもデザイン思考を使うことはできないか。数式を組み合わせた様々な指標をもとに意思決定をしていくが、無味乾燥でつまらない。どうすれば企業価値を最大化することができるかということが財務屋の問いであるが、デザイナーは別の問いを設定のする。投下資本収益率などの無味乾燥で面白みのない指標ではなく、みんながワクワクする様な指標で意思決定をすることはできないか。

イデアを利益率で測るのではなく、社員の多数決で決める。1人1億円ずつ渡して好きなことをさせる。

 

経理部や財務部は地味でつまらないというイメージがあるが、デザインによって新しい意味を見つけ出すことで、そのイメージは変えることができる。それを研究するのも面白い。

 

問いの立て方にはその人固有の考え方や価値観、問題意識があらわれる。

 

美術館に男性の便器にサインをしただけの泉という作品を置いたアーティストがおり、こんなものはアートではないという様々な意見が巻き起こった。ではアートとはなんなのか。美術館にあるものだけがアートなのか、日用品の中にアートはないのか。この問いが発生したこと自体がアートである。

 

アート作品には芸術家の様々な意味が込められている。休日に美術館に足を運び、それに込められている意味を学ぶ、それに対して自分なりの解釈を与える、ことも有用な一つの手段。アートをプロダクトに反映させる実例を示すことができればいい。

 

芸術家が今まではやってきたことは、世界の再解釈である。世の中の新しい見方をアートによって表現している。そのアートの手法、つまり意味の再解釈という考え方は経営にも応用することができる。